医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例抗菌薬は魔法の薬ではない - アフリカでの抗菌薬濫用を防ぐAIツール

抗菌薬は魔法の薬ではない – アフリカでの抗菌薬濫用を防ぐAIツール

抗菌薬の濫用は耐性菌の発生を招くとともに、ウイルス性感染症には効果がなく、副作用のリスクだけを被る。スイス発の「DYNAMIC」と呼ばれるプロジェクトは、アフリカ諸国で子ども達への医療を改善する活動の一環として「不必要な抗菌薬使用を減らすためのAIツールePOCT+」を検証している。

DYNAMICプロジェクトを主導するスイスの公衆衛生機関「Unisanté」のプレスリリースによると、ePOCT+はタブレット内のアプリで「臨床医が抗菌薬を処方すべきか意思決定を支援するアルゴリズム」を備える。タンザニアとルワンダで474人の子どもを対象とした検証では、ePOCT+使用によって、抗菌薬の処方割合がルワンダで70%→13%、タンザニアで63%→19%に低下した。「実際の医療現場でも不必要な抗菌薬から子ども達を守る効果を発揮した」とプロジェクトチームでは自信を深めている。

DW.COMのインタビューに対し、DYNAMICプロジェクトリーダーのValérie D’Acremont氏は「COVID以前は世界中ほとんどの人がウイルスと細菌の違いを認識しておらず、多くの感染症がウイルス性で抗生物質治療の恩恵を受けないことを理解していなかった」と述べ、この問題がアフリカ地域に限らず普遍的なものであることも強調する。DYNAMICプロジェクトは、タンザニアとルワンダの約80の医療機関で2年間の臨床研究がまもなく開始される。ツールが将来的に世界中の子どもたちの健康改善につながる可能性もチームでは見据えている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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