抗菌薬の濫用は耐性菌の発生を招くとともに、ウイルス性感染症には効果がなく、副作用のリスクだけを被る。スイス発の「DYNAMIC」と呼ばれるプロジェクトは、アフリカ諸国で子ども達への医療を改善する活動の一環として「不必要な抗菌薬使用を減らすためのAIツールePOCT+」を検証している。
DYNAMICプロジェクトを主導するスイスの公衆衛生機関「Unisanté」のプレスリリースによると、ePOCT+はタブレット内のアプリで「臨床医が抗菌薬を処方すべきか意思決定を支援するアルゴリズム」を備える。タンザニアとルワンダで474人の子どもを対象とした検証では、ePOCT+使用によって、抗菌薬の処方割合がルワンダで70%→13%、タンザニアで63%→19%に低下した。「実際の医療現場でも不必要な抗菌薬から子ども達を守る効果を発揮した」とプロジェクトチームでは自信を深めている。
DW.COMのインタビューに対し、DYNAMICプロジェクトリーダーのValérie D’Acremont氏は「COVID以前は世界中ほとんどの人がウイルスと細菌の違いを認識しておらず、多くの感染症がウイルス性で抗生物質治療の恩恵を受けないことを理解していなかった」と述べ、この問題がアフリカ地域に限らず普遍的なものであることも強調する。DYNAMICプロジェクトは、タンザニアとルワンダの約80の医療機関で2年間の臨床研究がまもなく開始される。ツールが将来的に世界中の子どもたちの健康改善につながる可能性もチームでは見据えている。
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