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胸部CT画像に基づくCOVID-19患者の予後予測AI

COVID-19患者の管理において、疾患の進行と死亡率の迅速かつ正確な評価が欠かせない。米マサチューセッツ総合病院(MGH)の研究チームは、胸部CT画像からCOVID-19患者の予後を直接予測する「教師なしAIモデル」を構築した。本チームは先行してScientific Reportsから公開した研究論文の中で、教師ありAIモデルによって胸部CT画像からCOVID-19患者の予後を予測できることも示していたが、教師なしとした今回のモデルでは、その構築に「アノテーション作業」も不要となり、画像単独に基づくエンドトゥーエンドの高精度な生存分析モデルを実現した形となる。

Medical Image Analysisからこのほど公開されたチームの研究論文によると、モデルの根幹に教師なしAIを用いることで、定量的画像解析よりも高い精度で、患者CT画像から直接予後を予測することができるという。これは、敵対的生成ネットワーク(GAN)によって胸部CT画像から直接的に生存時間の推定を行うことを可能とする「pix2surv」と呼ばれる新たな予後予測モデルを提案するもの。これにより、このモデルでは、従来の殆どの画像ベースの予測モデルでは不可能であった、患者固有の生存時間を予測できる。MGHの3D Imaging Researchチームを率いる吉田広行・研究ディレクタは「この教師なしAIモデルは従来手法に比べ、大幅に高い予測精度と低い予測誤差を持つ」と述べるとともに、研究チームでは現在「本モデルが他疾患にも拡張可能」と考え、その可能性を模索している。

1811年に設立されたMGHは、ハーバードメディカルスクール最大の教育病院として知られる。Mass General Research Instituteは、米国屈指の病院ベース研究プログラムを展開しており、年間研究活動費は10億ドルを超え、30以上の研究所・センター・部門で働く9,500名以上の研究者によって構成されている。 

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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