早期肝細胞がん切除術後の生存率を予測するAI研究

肝細胞がんは、ハイリスク患者のモニタリングプログラムと画像診断技術の向上により、全体の40-50%が早期肝細胞がん(EHCC: early hepatocellular carcinoma)として診断されるようになってきた。EHCCは切除や焼灼による根治的治療で良好な予後が期待できる。しかし、肝細胞がんの予後を予測する病期分類は、EHCC患者の切除術後に焦点を当てていないため、その予測精度は不十分との指摘があった。

南京医科大学の研究グループでは、EHCCに対する肝切除後の生存率を予測する機械学習ベースのモデルを開発している。肝切除を受けたEHCC患者2,778名のデータから構築・検証された機械学習モデルは、年齢・人種・αFP・腫瘍径・多房性・脈管侵襲・組織学分類・線維化スコアといった8つの変量から構成されている。これは「10年後の疾患特異的生存率」についてc統計量 > 0.72という良好な予測精度を達成しており、AJCC分類のような既存の病期分類と比較しても優れたリスク層別化ができたという。研究成果は Journal of Hepatocellular Carcinoma誌に掲載されている。

同研究は、大規模データセットに基づく機械学習アルゴリズムをEHCCに初めて適用したものと謳う。著者らは「容易に入手できる診療データから学習したモデルによって、既存の予後予測情報を補完し、EHCC切除後患者の個別化治療を改善する可能性を示すことができた」と結論づけている。

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The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。

1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、SBI大学院大学客員准教授、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. 杉野 智啓
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。