耐性菌の迅速検査に向けたセンサー開発

抗菌薬の過剰投与から細菌の耐性が高まり、世界の医療システムに負担をかけている。現行の抗菌薬感受性試験(AST: Antibiotic Susceptibility Test)はコストが高いことに加え、結果処理に最大48時間かかるという時間的制約もある。カナダのブリティッシュコロンビア大学オカナガンキャンパス(UBCO)では、迅速で費用対効果の高いツールとして、抗菌薬耐性を測定するマイクロ波センサーの研究開発に取り組んでいる。

UBCOのニュースリリースによると、同研究ではマイクロ波を高感度に測定する空洞共振器を用い、寒天培地上で培養された大腸菌に抗菌薬エリスロマイシンを投与した際の振幅を測定している。抗菌薬なしで菌が増殖する場合は15時間で最大0.07dBの振幅変化があるが、抗菌薬で増殖が抑制されると振幅変化は0.005dBに留まった。このセンサーによって6時間以内に「感受性の決定的な結果」を示すことができるとして、迅速かつ高感度な耐性菌検査への応用が期待されている。研究成果はScientific Reports誌に掲載された。

視覚的に自明となる前に「細菌の成長を区別」することで、抗菌薬の投与量や種類を調整するリアルタイムな個別化治療への道が拓かれる。研究を主導するUBCOのZarifi氏は「抗菌薬耐性を獲得する細菌側の進化が喫緊の課題だが、センサーや診断技術の適応は後れを取っている。医療従事者が自由に使えるツールが増え、抗菌薬の不適切使用を減らし患者ケアの質が高まることを、私たちは最終的な目標としている」と語る。研究グループは次の段階として、センシングデバイスにAIを統合したスマートセンサーを開発することを目指している。

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1. 岡本 将輝
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