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画像解析AIの性能向上に読影報告書を活用

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究グループは、放射線科領域で取り扱われる画像解析AIの性能向上を目指し、医療画像に付随する膨大な「読影報告書」に注目している。画像情報とテキスト情報を同時に解析し、相互情報として運用することで強力な性能を達成できるか、新たなアプローチに関心が集まっている。

MITが27日明らかにしたところによるとこの手法では、まずニューラルネットワークに、肺のX線画像から特定疾患の重症度を判断できるようにし、数字情報として表現させる。またさらに別のニューラルネットワークを用意し、今度は読影報告書内のテキスト情報を別の数字の集まりとして表現させる。そして、3番目のニューラルネットワークが、これら画像とテキストの情報を統合し、2つのデータセットの相互情報を最大化するように調整する。MITのPolina Golland教授は「画像とテキストの相互情報量が多いということは、画像はテキストを、テキストは画像を高度に予測しているということだ」と話す。

本アプローチは画像や読影報告書全体を取り扱うのではなく、報告書を個々の文章に分け、その各単一文章が「画像を関連箇所に分解する」ことで成立する。これにより、1. 画像全体やレポート全体を見るよりも、より正確に疾患重症度を推定することができ、また、2. モデルはより小さなデータを対象とするので学習が容易で、学習サンプル数も多くなる、としている。画像およびテキストを対象としたこの新しい手法は、医療内外での活用が検討されている。なお、本研究成果は、今秋開催される医用画像コンピューティングに関する国際会議「MICCAI 2021」で発表される。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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