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人種バイアスは除去できるか? – 網膜血管から人種を識別するAI

眼底写真の網膜血管マップ(RVM: Retinal Vessel Map)を「グレースケール」として色素情報を除くことで、理論的には人種を識別する特徴は残らないと考えられる。しかし、「人種バイアスを取り除こうと試みても、黒人/白人で網膜静脈の人種差をAIが識別できてしまう」という研究成果が発表された。

arXivで公開されている本研究では、未熟児網膜症のスクリーニングを受けた乳児のグレースケールRVMから人種固有の特徴を識別できるか評価している。その結果、構築された畳み込みニューラルネットワークは黒人/白人の乳児をほぼ完全に識別することができた。網膜血管のパターンが黒人と白人で生理学的に異なること、あるいは構築したAIアルゴリズムが「除去した情報と異なる方法で色素情報をセグメント化」していること、などが要因として考察されている。

著者らはどちらの要因にしても、AIモデルは肉眼レベルでは認識できない人種間差を捉え、バイアスの発生リスクは伴い続けると述べている。医療における人種差を「平準化」する難しさは、AIの活用を考える上で最大の課題のひとつとして残り続ける。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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