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MIT「Mirai」 – 多様な人種背景で同等に機能する乳がん発症予測AI

乳がんへの早期介入は患者予後の改善のために欠かせない。早期診断や発症リスク予測に向けたAIツールが種々提唱されているが、多くは対象集団の拡張に伴ってそのパフォーマンスを低下させてきた。米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは「人種的マイノリティへの怠慢」を是正し、多様な人種背景で同等に機能する乳がん発症予測AIを構築している。

このほどMITが明らかにしたところによると、「Mirai」と名付けられたこのAIアルゴリズムは、マサチューセッツ総合病院(MGH)における20万を超えるマンモグラフィデータからのトレーニングを行った上で、MGHの他、スウェーデンのカロリンスカ研究所や台湾のチャンガン記念病院でも検証試験を実施したという。Miraiは3つのデータセット全てで適切に乳がん発症リスクを予測しており、人種的サブグループにおける検証でも性能の低下を認めなかった。また、従前のリスク予測指標であるTyrer-Cuzickモデルと比較して、約2倍のパフォーマンスを示すとしている。

Miraiは単にマンモグラフィ画像からのリスク評価を行うだけでなく、年齢や家族歴といった臨床的リスク因子が入力情報として利用可能な場合は、これらを考慮することでより高い予測精度を導くことができる。また、マンモグラフィ装置の差異など、臨床環境における現実的な変動によって影響されないアルゴリズム設計を特徴としており、世界標準的な乳がん予測ツールの実現に向けた歩みを着々と進めている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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