「デジタルツイン」の実現に向けて

現代医学は、ただ「疾患を待つ」といった治療中心の学問から、予防的で学際的な科学へと移行する必要がある。より個別化された体系的な医学を達成することを考えた時、遺伝子レベルで同質であるコピーモデルは、あらゆる医学研究において優れた研究対象となる。英ケンブリッジ大学の研究チームは、「人体全体をモデル化した患者デジタルツイン」を提案している。

Frontier in Geneticsに掲載されたチームの研究論文によると、AIおよび数理モデリングを統合したフレームワークにより、臓器・組織・細胞レベルでの情報を組み合わせたデジタルツインモデルを生成した。ここから、2つの臨床事例を検討している。1つ目では、グラフニューラルネットワーク(GNN)を用い、バイタルパラメータの変化を示すような臨床エンドポイントをモニタリング・予測することで、現在および将来の患者ステータスを一望することができた。また他方では、敵対的生成ネットワーク(GAN)を用い、血液および肺の多組織発現データを生成し、レニン・アンギオテンシン経路における遺伝子発現を条件とした「サイトカインの関連性」を見つける方法を示している。

研究チームは「マルチスケールの計算モデリングとAIを統合する上で、このような模擬患者におけるグラフ表現が重要となる可能性」を指摘しており、デジタルツインの実現と効果的なシミュレーション手段について強力な科学的示唆を与えている。

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1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、SBI大学院大学客員准教授、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. 杉野 智啓
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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