AIシステムで「従来の肺機能評価」を置換へ

スパイロメトリに代表される従来型の肺機能評価は、座位の取れない患者や適切に指示の入らない認知機能低下者、感染症患者など、そもそも施行が容易でないケースが少なくない。インド・テランガーナ州に所在する医療AIスタートアップのSalcit Technologiesは、多面的な肺機能評価を取り込んだAIプラットフォームにより、従来の呼吸機能検査を完全に代替することを狙っている。

同社の開発する呼吸機能評価プラットフォーム「Swaasa」では、体温や酸素飽和度、症状、咳嗽音を機械学習によって解析することで、より非侵襲的かつ簡便な肺機能測定を実現しようとする。また、インドで最も歴史ある医科大学であるアンドラ医科大学が主導し、プライマリーヘルスケアの現場におけるSwaasaの試用が開始され、2,000名の患者を対象に6ヶ月間に渡って臨床評価が行われる。

胸部レントゲンやCTを含め、既存の呼吸器検査は費用と時間がかかり、特に医療リソースの十分でない地域では現実的な評価手段ではなかった。肺疾患のスクリーニングにおける有効性を検証したのち、「スパイロメトリの完全な代替」という大きな野心をもって加速度的な研究開発が進められている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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