心臓が血液を送り出す機能が低下する「心不全」の診断は、心エコーなどの診断技術に大きく依存する。一方で、専門検査ゆえに人的・物的な制約が少なからずあった。人間の医師では検出が難しい「心電図上の微細な変化」をAIアルゴリズムで解析し、心不全をより簡便かつ迅速に診断しようとする試みが広がっている。
米マウントサイナイ医科大学のリリースでは、同大学の研究メンバーが学術誌 Journal of the American College of Cardiologyに発表した「深層学習アルゴリズムによって心電図から左右心室機能不全を識別する」研究成果を紹介している。心エコーレポートからデータを抽出する自然言語処理プログラムをまず構築し、各患者における心室機能不全を捉えた上で、心電図波形からこれを予測するニューラルネットワークをトレーニングした。その結果として、心電図から左心室駆出率50%以上で正常範囲の患者をAUC=0.94、駆出率40%未満の患者をAUC=0.87の精度で検出できた。また右心室における収縮・拡張の複合障害予測についてAUC=0.84を達成している。
本研究は、これまでに先行する心電図AIではみられなかった「右心室」の機能不全を評価できる点がユニークと言える。著者のひとりAkhil Vaid医師は「私たちは、簡単かつ低コストで心臓全体を理解できるAIを開発する点で最先端を目指した。研究成果は、左右どちらの心不全か正しく診断することに役立つだろう」と語っている。
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