認知行動療法(CBT)は米国で最も一般的なトークセラピーとして知られる。精神科および心療内科領域の種々の疾患群において、その有効性には確たる科学的エビデンスがある。一方で、提供される認知行動療法の「質」を評価することは必ずしも容易ではなく、主観的評価にその大部分を依存してきた。
PLoS ONEからこのほど公開された、南カリフォルニア大学などの共同研究チームによる論文では、訓練中のセラピストと患者の間で交わされた「1,100件以上に及ぶ実際の会話」からCBTの質的評価を行うAIを構築したとしている。AIは自動生成されたテキストトランスクリプションに基づき、セラピストの対人スキルを判断し、セッション中で適切な構成を取ったか(例えば、患者に課された宿題を取り上げたかどうか)、セラピストが患者に集中しているか、自分の話をし過ぎていないか、患者と協力してラポールを築くことができたか、等を適切に識別することができる。また、これらの要素を総合的に判定し、1つの品質指標を生成した。妥当性の検証では人間の評価者との比較において、精度73%での一致をみている。
著者らは「我々は人間の評価者に取って代わるAIを開発するのではなく、評価プロセスの効率を高めるとともに、自己評価のための有効なツールを提供することを目指す」としている。チームは今後、単なるテキストベースの評価ではなく、「抑揚」や「間」といった「話し方」を含むトーンクオリティの評価へと拡張すべく、音声解析技術の更新に目を向けている。
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