医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究心電図から「心房細動と心原性脳梗塞の発症」を予測

心電図から「心房細動と心原性脳梗塞の発症」を予測

Circulation誌から公表された新しい研究では、43万人の患者から得た160万枚の心電図を利用し、心房細動および心原性脳梗塞の発症リスクを高精度に予測する深層学習モデルを構築している。モデル開発には精密医療を扱うTempus社が関与しており、プロダクト化への道筋にも大きな注目が集まっている。

研究論文によると、米ペンシルベニア州ダンビルに所在するGeisinger Health Systemでの35年間に渡る患者治療データを用い、心房細動の既往が無い患者を対象とした「心房細動および心原性脳梗塞の発症リスク」を推定するニューラルネットワークを構築した。妥当性の検証試験では、81%の特異度と69%の感度で心房細動の新規発症を予測しており、3年以内に心原性脳梗塞を発症する患者の62%を特定することもできた。著者らは「これは既存の臨床モデルよりも優れている」と主張する。

米国では毎年3億回以上の心電図検査が行われているが、従来の12誘導心電図単独では通常、脳卒中などの「心房細動に関する転帰」までを正確に予測することはできない。著者らは今回の研究成果が心血管治療の向上に大きく貢献すると考えており、疾患スクリーニングや治療管理計画への革新的影響を与えるとして成果の重要性を強調している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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