米メイヨークリニックの事例をはじめとし、心電図検査へのAI活用をこれまでにも紹介してきた(過去記事)。心電図のように、費用対効果が高く身近な検査手法によって診断・スクリーニングする、いわゆる「ポイントオブケア検査」は近年特に注目が集まる。英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者らによる、「心電図を取得可能な『スマート聴診器』によって心不全を識別するAIアルゴリズム研究」が、NHSにおける検証としては初めて完了し、The Lancet Digital Healthにその成果が発表された。
同論文によると、研究で用いられたスマート聴診器「Eko DUO」は単リード心電図を取得することが可能で、聴診部位1ヶ所につき15秒間の心電図記録を行ったという。1,000人以上のNHS患者を対象とし、Eko DUOで収集したデータに基づき、「左心室駆出率(LVEF)が40%以下に低下した心不全患者」をスクリーニングするAIアルゴリズムの性能を検証している。結果として、AUROC 0.91、感度92%、特異度80%という識別精度を明らかにした。
心不全は英国人口の2%が罹患し、NHS予算の4%を占めるとされる。今回の成果は、GP(一般開業医)レベルにおいてより早期に、より費用対効果の高い心不全スクリーニングが実現可能であることを示唆する。インペリアル・カレッジ・ロンドンのリリースによると、NHS全体での採用を前提とし、さらなるエビデンス構築のため、都市部/農村部のGP診療所で得られるメリットを検証する追加研究を予定する。
関連記事: