ゲームが健康に与える影響は、近年の「デジタル治療」の普及とともに注目を集めている。位置情報を利用したモバイルゲームの代表格「Pokémon GO」が軽度の抑うつを改善する可能性を示した、とする研究がJournal of Management Information Systemsに掲載されている。
2022年4月に発表された本研究では、Pokémon GO が2016年に英語圏12か国166地域で時期をずらして段階的にリリースされたことを利用し、アプリリリース後のGoogle Trendsデータから「Google Misery Index」と呼ばれる「陰惨な単語検索の指数」を地域毎に解析した。抑うつ状態にある患者がネガティブな単語(不幸・疲れた・悲しい・寂しい・絶望・暗い・泣く・ブルー、など)を検索する傾向にあることは、各種先行研究で示されている。解析の結果、これらのネガティブな検索傾向が、Pokémon GOがリリースされた地域ではその後6週間ほど有意に減少していたという。因果関係の証明に限界はあるものの、著者らは本研究の結果をもって「位置情報利用モバイルゲームが抑うつを改善する可能性」を主張する。
この現象が観察された仮説として、著者らは、Pokémon GOをはじめとする位置情報利用モバイルゲームによる「屋外での身体活動」「他ユーザーと対面する社会活動」「自然との触れ合い」が精神衛生へ好影響を与えた可能性を挙げている。ゲーミフィケーションによる行動および意識変容が健康にもたらす影響は、研究トレンドの1つとして今後も検証が進むと考えられる。
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