ソーシャルメディアや電子健康記録(EHR)から精神的健康状態を評価するため、自然言語処理(NLP)を活用する研究者が増えている。英ランカスター大学の研究チームは、抑うつ状態と躁状態を交互に繰り返す「双極性障害」において、NLP手法によるケア改善を狙った論文に対するスコープレビューを行い、このほど研究成果を公表した。
JMIR Mental Healthから公開されたチームのレビュー論文では、複数の医学論文データベースから「双極性障害とNLPに関連する用語」を系統的に探索し、35報の論文が参入基準を満たしてレビュー対象となっている。うち、双極性障害の予測や分類を狙ったものが25報と最多で、双極性障害の言語的特徴の調査を含むものが13報となっていた。また、倫理的配慮が十分になされているものは21報(60%)に留まった。
研究者らは「現在の先行研究は、双極性障害を持つ人々へのケア提供、ケア改善に向けた言語的分析に焦点が当てられている」とした上で、ソーシャルメディアデータにNLP手法を適用することで、双極性障害の早期発見や臨床評価、自殺防止に役立ち、既存の臨床手法を補完することができる点を強調している。一方、同領域の研究課題において、患者プライバシーが適切に保護されていない可能性を指摘し、研究から生じる社会的影響を考慮した上で、適切な研究デザインと倫理的なデータ利用への議論を求めている。
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