2020年、米国では「約1億人が自身の健康記録にオンラインでアクセスした」との推計がある。連邦規則「21st Century Cures Act(21世紀治療法)」が、安全なオンラインポータルを通して「患者が自身の臨床情報への自由なアクセスができること」を義務付けたことにより(いわゆる「オープンノートルール」)、患者の情報アクセスはさらに増加していくとみられている。そういったなか、カルテ記録に散在する「医薬略語」は患者の理解を制限しているとの指摘が多い。
JAMA Network Openに発表された研究では、「カルテに頻出する10種の医薬略語が患者の理解度にどれだけ影響を与えているか」について、米国大都市圏3つの病院を対象に、前向きの無作為化試験で検証した。比較されたのは、カルテ文章を「略語のまま」読むグループ30名と、「略語を正式表記に展開したもの」を読むグループ30名。10種の頻出略語は、hrs(時間)、MD(医師)、BP(血圧)、ED(救急部)、yo(年齢)、pt(患者)、HF(心不全)、hx(病歴)、HTN(高血圧)、MI(心筋梗塞)としている。主要な評価項目は、10種のうちいくつを総合的に理解できていたかスコア化したもので、正式表記に展開したものを読む患者群(9.5/10)が、略語を読む群(6.2/10)よりも有意に高い理解度を示していた。
本研究の対象患者は、過去にヘルスケアシステムに相応に接した集団という特性があったにも関わらず、研究グループが当初予想していたよりはるかに低い理解度であった。特にMIやHTNといった略語の理解度は40%未満に留まっていた。研究グループは今回の結果を受け、略語を自動的に展開表記するようなシステムが、患者の健康記録アクセスに役立つ可能性を指摘している。
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