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COVID-19は「臨床医が電子カルテに費やす時間」をさらに長くさせた

Journal of the American Medical Informatics Associationに掲載された研究論文によると、臨床医が電子カルテシステムに費やす時間は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック後、さらに長くなった可能性のあることが明らかにされた。

米カリフォルニア大学サンフランシスコ校やスタンフォード大学、ハーバード大学などの共同研究チームは、366に及ぶ医療機関において、2019年末から2021年初頭までの電子カルテシステムのアクティブユース時間の測定を行った。研究論文によると、1日のシステム利用時間全体と時間外での利用時間の両者が、パンデミック初期の4ヶ月では減少したものの、その後有意な増加がみられたという。これは主として患者からの受信メッセージの増加に起因しているとし、パンデミック前と比較して受信メッセージ量は157%となっていたほか、メッセージは1通あたり電子カルテシステムのアクティブユース時間を2.32分増加させていた。このような受信メッセージの増加、およびその他電子カルテ入力情報の増加は、パンデミックに伴う遠隔医療の普及を背景にしている可能性があると考察する。

電子カルテシステムに向き合う時間の増加が、医師の燃え尽き症候群を助長するとの先行研究もある。著者らは「政策立案者や医療システムの意思決定者らは、将来の診療報酬モデルやワークフローを開発する際、臨床医の勤務時間に対するこうした新たな変化を念頭に置き、電子カルテによる臨床医の燃え尽きを悪化させないよう注意を払う必要がある」と結論付けている。遠隔医療の継続的な活用を求める声は高まっているが、各国においてどう適切な診療報酬体系を見出すか、電話による診療とビデオによる診療を同レベルで診療報酬に含めるべきか、バーチャルケアを臨床医のワークフローにどのように統合すべきかなど、多くの課題が未解決となっている現実もある。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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