音楽によって心身の健康状態を改善する「音楽療法」という、代替医療のアプローチがある。音楽療法の効果には未解明な部分もある一方、AI技術の進歩とともに応用の可能性が高まっている。カナダのLUCID社は、AI技術によって個人に最適な音楽的介入を予測し、メンタルヘルスの改善効果を示す音楽療法ツールを開発している。
LUCIDでは、音楽と聴覚への刺激が不安症状に及ぼす効果について臨床試験を行い、最新の研究成果をPLOS ONEで公開している。同研究では不安障害に抗不安薬を服用している参加者163名を対象に、音楽とABS(4-8Hzのシータ波を基調とした聴覚へのビート刺激)併用、音楽単独、ABS単独、対照群(無音条件と同等で、プラセボ効果を抑制する1/fゆらぎを持つピンクノイズ)に無作為割り付けし、1回24分間の治療セッションを経た不安軽減効果を検証した。その結果、音楽およびABSによる介入は不安症状に有意な低減効果を示し、特に中等度の不安を有する参加者に対して音楽・ABS併用が効果的であった。
LUCIDは、楽曲を定量的な音楽的特徴に分解し、深層強化学習によって楽曲がリスナーに与える影響を予測する技術の開発を継続する。メンタルヘルス領域では、ケアに対する良好なアクセスと親しみやすさが重要事項となる。多くの人々が気軽に音楽ストリーミングサービスを利用する状況の延長線上には、同社の「音楽を薬に変える」ミッションが注目されている。
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