医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究既存RCT群が報告ガイドラインを遵守していない可能性

既存RCT群が報告ガイドラインを遵守していない可能性

米ハーバード大学医学部などの研究チームは、これまでに実施された「機械学習技術に基づく介入」のある無作為化臨床試験のほとんどで、既存の臨床試験報告ガイドラインであるCONSORT-AIへの遵守が無いことを明らかにした。研究成果はこのほど、JAMA Network Openから公表された。

患者ケアの多様な側面を改善し得る機械学習の可能性は広く注目されているが,臨床実装への障壁は小さくない。多くのケースで、無作為化臨床試験は「介入を大規模に臨床採用するための前提条件」となるが、機械学習技術による介入に焦点を当てた臨床試験の設計と実施、その報告に関して、重要な疑問が残っている。研究チームの研究論文によると、参入基準を満たした41件の臨床試験に関して系統的調査を加えたところ、「CONSORT-AIが示す基準の全て」を遵守する試験は1つもなかった。非遵守の項目としては、質の低いまたは利用できない入力データを評価していない(38試験、93%)、パフォーマンスエラーを分析していない(38試験、93%)、コードまたはアルゴリズムの利用可能性に関する記述を含まない(37試験、90%)など。また、全体のバイアスリスクは、7試験(17%)で「高度である」と評価された。

著者らは「ヘルスケア領域において機械学習ベースのアルゴリズムが多数開発されているにも関わらず、妥当な臨床試験が実施されていない事実を明らかにした」としており、既存の無作為化臨床試験における「報告基準の遵守とバイアスのリスク」には高いばらつきがあることを強調している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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