WHOの新指針 – 医療AIの倫理およびガバナンス

AIはヘルスケアにおける躍進も顕著であり、医療者・患者を問わず、その可能性には大きな期待が抱かれている。世界保健機関(WHO)は28日、「AIの設計・展開・使用の中心に倫理と人権を据えること」を求める新たな指針を公表した。

「医療AIの倫理およびガバナンス」と題されたこのレポートは、WHOが設定した専門家パネルが2年間の協議によって得た成果をまとめたもの。WHOのディレクターであるTedros Adhanom Ghebreyesus氏は「この新しいレポートは、リスクを最小限に抑え、落とし穴を回避しながら、AIのメリットを最大化する方法を各国に提供するものだ」と述べる。レポート内ではAIの有用性に多面的に触れており、特に医療リソースの乏しい国や地域における活用が、医療格差是正に寄与する可能性などを強調している。一方で、AIの健康メリットを過大評価しないよう求めるとともに、健康データの非倫理的収集や使用、アルゴリズムにエンコードされたバイアス、サイバーセキュリティなどの問題点にも言及している。

レポートは一貫して「倫理と人権への配慮」が欠かせない点を各所で指摘し、政府やヘルスケアプロバイダーおよび開発者は、AIテクノロジーの設計・開発・展開のあらゆる段階でこれを重視しなければならないとする。AIによってもたらされる利益を最大化するとともに、不利益を最小化するための有用なガイダンスとして、急速な参照数の増加が続いている。

Ethics and governance of artificial intelligence for health

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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