EU – 欧州最大の病理画像データベース構築へ

EU Innovative Medicines Initiative(IMI)の新しいコンソーシアムは、医療AI開発の加速を目的として、欧州最大の病理画像データベースを構築する。欧州の主要な研究拠点や医療機関、製薬企業群を数多く抱き込んだ巨大プロジェクトは、6年間で7000万ユーロが投資される予定で、まさに病理学の新時代を告げるものとして期待されている。

病理学は悪性腫瘍をはじめとして多くの疾患の診断・治療・予後評価に寄与するが、その作業の大部分が「専門医による顕微鏡下での組織サンプル検査」という定性解釈に依存している。近年ではデジタル化の波が病理分野にも及び、病理スライドの電子化が急速に進んだ。このことによってAIの適用可能性が格段に向上し、現在では病理診断の自動化・定量評価を目指したAIベースの研究開発が世界規模で多面的に進んでいる。

オランダ・アイントホーフェン工科大学が15日明らかにしたところによると、「BIGPICTURE」と呼ばれるこのプロジェクトでは、AI開発を目的とした大規模な病理画像リポジトリの構築を目指すという。関連するインフラの整備と、患者プライバシーを保護する法的・倫理的な環境の構築から始め、初期セットのデジタルスライドには人間と実験動物から300万枚を収集する予定とする。また、実臨床や研究、AI開発の支援を行う機能をシステムに実装するため、独自の研究も開始する。病理AIが高い精度を持ち、極めて一般的に活用される世界となるのはもう遠くはないはずだ。

TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事