医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究「医療機関へのプレッシャー」を軽減する胸部X線画像識別AI

「医療機関へのプレッシャー」を軽減する胸部X線画像識別AI

胸部X線(CXR)検査は、胸部疾患の診断に幅広く利用可能で、安価かつアクセス性と操作性に利点がある。しかし、画像の解釈に専門家が必要な点が、特に専門リソースの不足する医療過疎地域でのボトルネックとなりやすい。西スコットランド大学(UWS)のチームは、医療機関に押し寄せる検査需要のプレッシャーへの解決策として「AIアプローチによるCXRの自動識別技術」の開発を進めている。

Computer Methods and Programs in Biomedicineに掲載された同チームの研究では、結核・肺炎・COVID-19などを含むCXRの画像データセットから、疾患を自動分類するディープニューラルネットワークをトレーニングした。本研究では、2020年の発表から最先端の画像分類機械学習モデルとして隆盛した「Vision Transformer(ViT)」と、その改良モデルの「Input Enhanced Vision Transformer(IEViT)」が用いられている。結果、IEViTはViTに対し、あらゆる性能指標で改善を示し、特に精度はIEViTで約98%と、ViTから最大+6.41%の改善がみられていた。

元来はCOVID-19の迅速な検出のために開発を続けていたが、現在では広い範囲の胸部疾患を識別可能となっている。著者でUWSのNaeem Ramzan教授は「世界中の病院がプレッシャーに晒されているのは疑いようもない。COVID-19は状況をさらに悪化させ、医療スタッフに負担を強いている。プレッシャーを軽減し、貴重なスタッフの時間を解放する技術こそが真に必要とされている」と語った

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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