低中所得国(LMICs)では、診断の遅れを主因とする乳がんの死亡率上昇が課題となっている。LMICsにおいてマンモグラフィによるスクリーニングは普及に至らず、多くの乳がん患者は乳房内に腫瘤が触知可能になってから受診する。スクリーニング手法として、ポータブルかつ低コストな乳房超音波検査は有望だが、技師と専門医の不足が普及を制限している。
米ロチェスター大学の研究チームは、「専門家不在でも乳房超音波検査の実施を可能にするAI手法」の評価を行い、その成果をPLOS Digital Healthに発表した。本手法では超音波画像取得のため、標的領域上を一定のルールでプローブ操作する「volume sweep imaging (VSI)」を採用している。VSIは未経験者でも数時間の講習により習得可能で、実際研究内では臨床未経験の医学生に2時間未満のトレーニングで操作させている。乳がんのAI診断システムとしてはSamsung Medison社の「S-Detect for Breast」を用い、診断精度を検証した。その結果、VSIをS-Detectで判定したレポートは、専門家による通常の超音波検査を経た判定レポート結果と有意に近似していた。また、実際の乳がんを感度100%・特異度86%で「悪性の可能性あり」と判定したとする。
研究チームでは、VSI手法とAIシステムの統合により、専門家不在でも画像取得と判定の双方が可能となり、LMICsにおける超音波診断へのアクセス向上と、乳がんの転帰改善の可能性を指摘している。
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