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大規模言語モデルが臨床記録の解読に貢献する

患者個々の有益な情報は、電子カルテ上の診療記録に「専門用語や略語にまとわれて」閉じ込められている。機械的な情報抽出のためには、複数の機械学習モデルをトレーニングする必要があるが、それぞれのモデル学習には専門家による大量のラベリング作業を要し、時間・コストが膨大となる。

米マサチューセッツ工科大学(MIT)のコンピュータサイエンス・人工知能研究所(CSAIL)の研究者らは、このデータ分離に大規模言語モデルを活用し、過負荷な専門用語や略語の展開、投薬計画の抽出といったタスクを、専門家による大掛かりなラベリング作業無しに実現している。MITが1日、明らかにしたところによると、当該システムに対して仮に「CTA(冠動脈造影)の結果」を展開させようとした場合、結果を示すだけでなく、関連する理学所見を「聴診に異常無し」などといったクリーンな出力として返すことができる。これは、さらにパーソナライズされた臨床提案を将来的に実現する可能性があり、研究チームはさらなる研究継続の旨を明らかにしている。

CSAILの主任研究員であるDavid Sontag氏は「大規模言語モデルによるこのアプローチは、臨床上の自然言語処理を大きく変える可能性がある」とし、ゼロショット臨床情報抽出の進歩によって、たとえ何百もの異なるユースケースがあったとしても、問題とならないことを強調する。また、その即時性・簡易性にも言及しており、「特定タスクのために大量のデータにラベルを付ける必要があったとしても、数分の作業で各モデルを構築することができる」としている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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