認知症早期診断AIツールの実環境試験

日常診療の現場では、未診断の認知症患者が数多く潜在している。その理由には、プライマリケア医と患者の接点に限りがあることや、認知症診断への社会的偏見も根強いこと、早期診断のメリットが周知されていないことなどが挙げられる。米レーゲンストリーフ研究所のチームは、プライマリケアの実環境で認知症患者を検出するAIツールの検証を進めている。

Trialsに掲載されたプロトコル論文では、自然言語処理を用いて電子カルテから抽出したデータ(記憶に関する問題、血管系障害、併存疾患など)を組み合わせ、軽度認知障害やアルツハイマー病を検出するAIツールに対する検証計画を示している。2023年初頭から開始する新たな試験では、65歳以上で、過去3年間の電子カルテデータを有し、1年以内に1回以上プライマリケア診療所を訪れたことのある7,200名の住民が登録される。

研究を率いるMalaz Boustani氏は「米国では、認知症患者の50-80%が臨床環境において認識されておらず、軽度認知障害までを含めると80%以上が認識されていない可能性もある」とした上で、早期診断と適切な医療介入によって、認知予後の改善、医療コストの削減などにつなげられる事実を強調する

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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