リンチ症候群は、大腸がん症例の数%を占める常染色体優性遺伝疾患であり、特定の染色体変異を有する患者においては、大腸がんの生涯発症リスクが70%を超えるため、定期的な大腸がんサーベイランスを受けることが欠かせない。ドイツ・ボン大学病院が有する国立遺伝性腫瘍疾患センター(NZET)の研究チームは、AIシステムによって「リンチ症候群患者における大腸内視鏡検査の効果を改善できること」を明らかにした。
United European Gastroenterology Journalからこのほど公開された研究論文によると、2021年12月から2022年12月の間に、46人のリンチ症候群患者を標準的な大腸内視鏡で調査し、一方で50人のリンチ症候群患者に対してAI支援下における大腸内視鏡検査を実施することで、その検出精度を比較した。結果、AI支援検査の方が標準検査よりも約10%高い検出率を示し、有意に多くの腺腫を検出した。
著者らは「本研究は、AI支援リアルタイム大腸内視鏡検査が、リンチ症候群患者の内視鏡サーベイランスを最適化し、特に平坦腺腫の検出を改善する有望なアプローチであることを示した」としている。リンチ症候群はドイツ単独でも30万人が罹患しており、特に若年における大腸がん発症の大きなリスクとして、そのサーベイランスの精度向上が強く求められてきた背景がある。
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