ICUせん妄は、集中治療室(ICU)入室中の成人に起こる急性精神障害で、失見当識や知覚障害、思考錯乱、情緒障害など、多彩な症状を呈する。過活動型のせん妄は症状が強いため医療者にも認識されやすいが、低活動型のICUせん妄はその多くが見過ごされている一方で、患者予後を悪化させる点では過活動型と変わらない点が問題視されてきた。
ジョンズホプキンス大学の研究チームは、電子カルテで日常的に収集される臨床データおよび生理学的データに機械学習を適用し、ICUせん妄を予測できるとする研究成果を公表した。Anesthesiologyから公開された研究論文によるとチームは、全米208病院、20万件を超えるICU滞在データを利用し、この機械学習モデルをトレーニングした。「静的モデル」と名付けられたモデルは、ICU入室後24時間のデータを用い、その後ICU滞在時にせん妄を発症するかを予測するもので、「動的モデル」と名付けられたモデルは経時データから12時間後までのせん妄発症を予測した。性能検証においては前者がAUC 0.73、後者が0.85を示し、ツールの臨床的有効性が示唆される結果となった。
著者らは「臨床データおよび生理学的データで学習した機械学習モデルは、ICUせん妄を予測し、時間的な制約のある中でも動的予測をサポートすることができる」としている。
参照論文:
Predicting Intensive Care Delirium with Machine Learning: Model Development and External Validation
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