医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究「スタチン治療拒否」の背景を自然言語処理で探る

「スタチン治療拒否」の背景を自然言語処理で探る

心血管疾患リスクの高い患者に対する、脂質異常の治療薬「スタチン系薬」の利点が確立されている。一方、スタチンによる治療を患者が拒否するケースは臨床現場でもしばしば見られる。米ブリガムアンドウィメンズ病院の研究チームは、自然言語処理で電子カルテ記録を解析し、スタチン治療を受け入れない患者の実数とその背景を調査した。

JAMA Network Openに掲載された同研究では、2000年〜2018年にMass General Brighamの関連病院を受診した心血管疾患高リスク患者24,000名以上を対象に、電子カルテ文書を自然言語処理で解析した。患者がスタチン治療の拒否に至る背景は旧来の構造化データには反映されておらず、近年の強力なAIツールによって膨大なテキストの解析が可能となった背景がある。本研究の結果として、高リスク患者の21.9%が初回のスタチン治療勧奨を受け入れていなかった。特に、女性は男性に比べて初回の治療勧奨を拒否する割合が有意に高かった(女性24.1% vs 男性19.7%)。また、初回にスタチンを拒否した患者はLDLコレステロール値を100mg/dL未満まで低下させるのに4.4年かかり、治療受け入れ患者の1.5年と比べ約3倍の期間を要していた。

著者のAlex Turchin氏によると「この研究はスタチンを拒否する患者の驚くべき数を明らかにし、その理由を患者と議論する必要を示した。拒否する女性の割合が高かったのは、”心血管疾患は女性より男性に影響が大きいという誤解”を理由の1つに考えている。現代医学が生命と生活の質にどれほどの違いをもたらしたか人々は過小評価していると私は思う。薬物治療が果たしてきた役割は大きい」と語った

参照論文:
Assessment of Sex Disparities in Nonacceptance of Statin Therapy and Low-Density Lipoprotein Cholesterol Levels Among Patients at High Cardiovascular Risk

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1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。

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