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「心臓病の遺伝リスク克服に必要な治療」を明示するAI

冠動脈疾患(CAD: coronary artery disease)には遺伝的リスクが関連するが、治療行動でどれだけ遺伝的リスクを克服できるか、その判断は容易ではない。英ケンブリッジ大学の研究チームは、「CADの遺伝リスク克服に血圧とLDLコレステロールをどれだけ低減させるべきか明示する」AIシステムを開発している。

米国心臓病学会(ACC)によると、同AIシステムは3月4〜6日開催の2023年次総会で発表されている。同研究では、因果関係を推論するAIと、CADの遺伝リスクスコアを組み合わせ、「遺伝リスクが平均より高い患者が、主要な冠動脈イベントを平均的なリスクまで減らすには、血圧とLDLコレステロールをどれだけ下げる必要があるかを推定する」モデルを開発した。その結果、CADの遺伝リスクは多くの人にとって比較的弱いリスク因子であることを明らかにし、血圧とLDLコレステロールのコントロールによって遺伝的素因を克服できる可能性の高いことが示された。AIシステムを利用することで、各年齢における達成目標と、達成に必要なステップの提示が可能になる。

研究チームのBrian A. Ference氏によると「このアプローチは説明可能なAIによるもので、AIを臨床利用に耐え得るものにできる。人々は単に自分のリスクを伝えられるよりも、どうすればリスクを減らせるか、推奨された行動でどれだけ利益が得られるか説明される方が、健康への投資を促進する動機付けになり、説得力を持つ」と同システムの利点を説明している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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