血液の凝固を防ぐ薬剤「ヘパリン」は、冠動脈疾患や血栓症の治療に広く用いられる。一方で治療有効性が低く、塞栓イベントの再発につながる過小投与や、出血リスクを高める過剰投与とならないよう、活性化トロンボプラスチン時間(aPTT)を血液検査でモニタリングする。しかし、薬剤代謝の個人差と検査そのものの不正確さにより、最適なヘパリン投与量の予測は容易ではなく、先行研究ではaPTTの有効域到達に中央値で約36時間もの時間を要していた。豪プリンセスアレクサンドラ病院の研究チームは、「ヘパリンの治療効果を予測するAIツール」を開発し、ヘパリン治療の安全性向上に取り組んでいる。
Interactive Journal of Medical Researchに発表された同研究では、クイーンズランド州の5病院から電子カルテデータを収集し、体重・生化学検査値・血球数・病歴・年齢・性別など多数の因子から「ヘパリン静脈注射開始後12時間以内のaPTT値を予測する」機械学習アルゴリズムを開発した。このモデルは特に、治療域を下回る場合の予測が正確であるという強みを持ち、過小投与を防止する上で重要な役割を果たすと考察されている。
著者のStephen Canaris氏は「本研究では機械学習アプローチによって、個々の患者がヘパリン投与にどのように反応するか、影響力を持つ約93の変数と、その中から特に予測力の高い上位10項目、それに続く20-30項目を特定することができた。機械学習は、臨床医が直感的には知り得なかった多くの予測因子を開発プロセスの中で明らかにすることができる」と語った。
参照論文:
Predicting Therapeutic Response to Unfractionated Heparin Therapy: Machine Learning Approach
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