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Curate.AI -「抗がん剤投与量の減量と治療効果の最適化」を目指すAIツール

化学療法における抗がん剤の用量は、治療ガイドラインによって「最大耐用量」が推奨される場合が多い。しかし、患者によっては最適効果につながらず、むしろ毒性が過度となることもある。この課題を克服するため、シンガポール国立大学(NUS)の研究チームは「Curate.AI」と呼ばれるAIツールを用い、「最小限の副作用で最適な効果が得られる抗がん剤投与量」を決定するための臨床試験を行っている。

NUSのチームは2020年8月から2022年4月まで、Curate.AIを用いた臨床試験「Precise.Curate」を実施し、その成果を6月5日開催の米国臨床腫瘍学会(ASCO)2022年次総会で発表した。Curate.AIは患者のデジタルアバターを作成し、各治療サイクルごとの腫瘍マーカー(CEA、CA19-9、CA125)などに応じて、次サイクルの推奨用量を決定するAIプラットフォームである。本研究では、大腸がんを中心とした進行性固形がん患者に、カペシタビン単剤投与、XELOX療法(カペシタビン+オキサリプラチン)、XELIRI療法(カペシタビン+イリノテカン)で化学療法を行った際の、「カペシタビン投与量」に対してCurate.AIによる最適化を試みた。10名の患者が試験に参加しており、結果では、標準治療と比較してカペシタビン投与量を「平均して20%減量できた」とする。臨床医は自身の臨床的判断に従い、Curate.AIによる推奨投与量を受け入れるか拒否するかを選択可能で、27回提示された推奨用量のうち26回(約96%)が受け入れられていた。

本研究は、がん化学療法の臨床ワークフローにAIツールを導入するパイロット研究となる。今後の検証によって一部の患者に抗がん剤投与量の減量が検討可能となり、奏功率や奏功期間の改善、医療費負担の軽減など、重要な役割も期待されている。また、進行度の高い終末期患者の場合には、がんの病勢をコントロールしながら副作用を最小化する、といった応用も検討されている。

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1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員准教授など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. 杉野 智啓
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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