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大規模言語モデルによるトリアージプロセスの支援

米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究チームは、25.1万人の匿名化済みデータセットを用いた研究により、大規模言語モデル(LLM)が患者の臨床記録から症状を抽出し、治療の緊急性を効果的に判定できることを明らかにした。研究成果は7日、JAMA Network Openに掲載された。

患者の治療緊急性を判断するトリアージプロセスは、ケアとリソースの最適割り当てに欠かせないものであるが、多くの患者を時間の猶予なく対応することは、救急部門にとって大きな負担となっている。研究チームは、GPT-4をベースとし、広範なプライバシー保護を備えるUCSFの生成AIプラットフォームを介して研究を実施した。脳卒中などの重篤な患者と、手首骨折などの比較的緊急性の低い患者を含む、マッチングされた1万組のサンプル(計2万人の患者)を用い、構成したモデルの性能をテストした。患者の症状だけを用いた際も、AIは89%の高確率でどちらの救急患者がより深刻な状態にあるかを特定できており、500組のサブサンプルにおける医師評価が86%であったのに対し、AIは88%と有意にその性能が上回っていた。

AIがトリアージプロセスを支援することで、深刻な状態にある患者を治療するための「医師の時間」を解放することができ、同時に複数の緊急要請をこなす臨床医にとってバックアップとなる強力な意思決定ツールを提供できる可能性がある。

参照論文:

Use of a Large Language Model to Assess Clinical Acuity of Adults in the Emergency Department

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