ChatGPTやGPT-4など、大規模言語モデルの先進性を示すニュースが連日報じられている。しかし、この種の技術を日常生活に取り入れる社会的影響はまだ十分に理解されていない。米コーネル大学の研究グループは「会話にAIを用いることで生じる社会的コスト」について調査している。
Scientific Reportsに掲載された同研究では、2種の実験から、対話にAIを利用することのポジティブ/ネガティブな二面性を明らかにした。1つ目の実験では、大規模言語モデルが自動返信するプラットフォーム「スマートリプライ」を用い、219組の参加者には「全員がスマートリプライを使用」「2名のうち1名だけがスマートリプライを使用」「スマートリプライを使用しない」という3条件に割り振って政策課題について討論させた。結果、スマートリプライ使用で「コミュニケーション効率」「ポジティブな感情表現」「コミュニケーション相手からのポジティブな評価」が高まっていた。一方、「スマートリプライ利用をパートナーから疑われた参加者は、自力で返信していると思われた参加者より否定的な評価(協力的ではない・親和性が低い)を受ける傾向」にあった。2つ目の実験では、「スマートリプライなし」「デフォルトのスマートリプライ」「ポジティブな感情トーンを持つスマートリプライ」「ネガティブな感情トーンのスマートリプライ」の4条件で政策課題の討論を行ったところ、ポジティブな感情トーンを持つスマートリプライの存在で、他条件よりポジティブな会話が増加することが明らかとなった。
著者のMalte Jung氏は「テクノロジー企業は、より速くより良くタスクを達成するAIツールの有用性を強調するが、社会的側面が無視されている。我々は孤立して生活しているのではないため、使うシステムは他者との相互作用に影響する。実際にAIを使っているかどうかに関わらず、AIでの文章作成を相手から疑われるだけで、より否定的に評価される傾向には驚いた。これは人々がAIに対して抱く根強い疑念を示している」と語っている。
参照論文:
Artificial intelligence in communication impacts language and social relationships
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