アルツハイマー病の早期診断は、患者とその家族に将来設計の猶予を与えるとともに、適切な介入によって予後の改善を見込むことができる。早期診断AIツール開発に向け、米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのチームは、「絵画品評の音声パターンから早期の認知機能障害を検出する研究」を行っている。
Diagnosis、Assessment & Disease Monitoringに発表された同研究では、機械学習と自然言語処理ツールを用いて、軽度認知機能低下患者114名の発話パターンを評価し、従来の診断バイオマーカーであるMRIスキャンおよび脳脊髄液中アミロイドβと対応させ、認知機能障害の早期検出における有効性を検証した。被験者は標準的な認知機能評価に加え、絵画作品「The Circus Procession(サーカスの行列)」について1〜2分間の自発的な音声による説明を記録した。この音声からは、会話能力・音声運動制御・アイデア密度・文法的複雑さ、といった特徴を抽出している。結果、軽度認知機能低下の検出において、語意意味論的スコアでAUC 0.80、音響スコアでAUC 0.77を達成し、従来の神経心理学的検査であるボストン呼称検査のAUC 0.66と比較して、有意に高い診断能力を示すことを明らかにした。
本研究において患者の音声記録を取り込むプロセスは10分未満であり、従来の神経心理学的検査より簡単に実行できるスクリーニングツールとして期待されている。筆頭著者のIhab Hajjar氏は「機械学習や自然言語処理が開発される前は、音声パターンの調査は非常に手間がかかり、初期段階の変化は人間の聴覚では検出が難しく、研究手法として成功しないことが多かった。本研究で採用した新しい手法は、標準的な機能評価では容易に検出できない症例であっても、認知機能低下患者の特定に優れた性能を発揮した」と語っている。
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