医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究機械学習モデル「ELDER-ICU」 - 高齢ICU患者の死亡リスクを予測

機械学習モデル「ELDER-ICU」 – 高齢ICU患者の死亡リスクを予測

高齢者に特有の併存疾患や虚弱(フレイル)は、急性期医療における死亡リスク上昇と密接に関連している。国際的な多施設研究により、ICUに入院した65歳以上高齢者の重症度を評価する機械学習モデル「ELDER-ICU」が開発されている。本モデルは米国内14病院のデータに基づいて設計、米国とオランダの171病院で検証され、その成果がThe Lancetに発表された。

「ELDER-ICU」モデルは、XGBoostアルゴリズムを用い、ICUに入院した高齢者の院内死亡率を予測する。予測因子として、ICU入室後24時間の患者データから、6つの主要カテゴリー(患者属性と併存疾患、虚弱、臨床検査、バイタルサイン、治療の内容、尿量)が採用されている。検証結果によると、死亡リスクの最も重要な予測因子上位10項目は、GCS(意識障害分類スケール)、総尿量、平均呼吸数、機会換気の使用、活動状態、CCI(チャールソン併存疾患指数)、GNRI(老年栄養リスク指数)、コードステータス(急変時処置の事前希望)、年齢、BUN(血中尿素窒素)であった。さらに予測因子総数の中から上位20項目に絞り込んだシンプル版の「ELDER-ICU-20」も、オリジナルの完全版と比較して同等の予測精度を持っていることが明らかにされた。

「ELDER-ICU」モデルは、高い院内死亡リスクを持つ患者を特定し、臨床医に速やかに通知する能力を持っている。既存の臨床スコアや死亡率予測モデルにはほとんど含まれていない、高齢者特有の特徴、例えば身体的虚弱、コードステータスなどを取り入れている点で、本モデルは大変ユニークとなる。表現が難しく複雑で多面的な概念を含むELDER-ICUモデルは、さらなる検討の余地を秘めており、その発展が期待されている。

参照論文:

Illness severity assessment of older adults in critical illness using machine learning (ELDER-ICU): an international multicentre study with subgroup bias evaluation

関連記事:

  1. 高齢者のER受診と入院を79%減少させるAIツール
  2. 「ICUせん妄」の発症予測
  3. Movendo Technology社 – 高齢者転倒リスクを予測するロボット医療機器とAIプログラム
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事