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AIによる皮膚がん診断が専門医と同等の信頼性

スマートフォンを使用したAIによる皮膚がん診断技術が、近年有望視されている。しかし、実際の臨床シナリオの中でどう機能するかについての実用性検証は不足する。オーストリア・ウィーン医科大学の研究チームは、色素沈着性皮膚病変の診断AIについて、実臨床環境で多施設前向き試験を行った。

The Lancet Digital Healthに発表された同研究では、2つのシナリオ(シナリオA: 皮膚がんが疑われる患者群、シナリオB: 多数のほくろがある患者群)の条件下でAIと臨床医の診断精度を比較した。使用デバイスはiPhone8 Plusにアタッチメントレンズを取り付け、MetaOptima Technology社のDermEngineと呼ばれるAIソフトウェアを使用している。本臨床試験のための最新のアルゴリズム(7-class)と既存のアルゴリズム(ICIS)の2種のアルゴリズムが用意された。その結果、7-classアルゴリズムは専門医と同等の診断精度を持ち、経験の浅い医師よりも優れていることが確認された。またISICアルゴリズムは専門医には劣るものの、経験の浅い医師よりも優れていた。

著者のHarald Kittler氏は、「AIアプリケーションは、専門医よりも多くの良性病変を検出・除去しようとする傾向があった。この傾向を頭に入れておけば、AIアプリケーションは使用に耐え得る。しかし無批判に使用してしまうと、あまりにも多くの偽陽性を拾い上げてしまうことに注意が必要だ」と語っている

参照論文:

Comparison of humans versus mobile phone-powered artificial intelligence for the diagnosis and management of pigmented skin cancer in secondary care: a multicentre, prospective, diagnostic, clinical trial

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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