AIが「MRIにおける前立腺がん検出」を支援

米マサチューセッツ総合病院などの共同研究チームはこのほど、MRIでの前立腺がん検出において、ディープラーニングモデルが放射線科医と同等の性能を示すことを明らかにした。研究成果は、北米放射線学会(RSNA)の専門誌であるRadiologyから公開された。

前立腺がんは男性において2番目に多くみられる悪性新生物で、その疾病負荷は世界的に巨大である。放射線科医は通常、臨床的に重要な前立腺がんを診断するため、異なるMRIシーケンスを組み合わせた技術(マルチパラメトリックMRIと呼ばれる)を使用する。診断結果は、標準化された解釈および報告手法であるProstate Imaging-Reporting and Data System version 2.1(PI-RADS)を用いて表現される。しかし、PI-RADSを用いたマニュアルでの病変分類には一定の限界が指摘される。AIを用いることで、がん検出の改善と観察者間のばらつき軽減が期待されてきた。

研究チームは、マルチパラメトリックMRIから臨床的に重要な前立腺がんを捉える畳み込みニューラルネットワーク(CNN)をトレーニングした。400の検査からなる内部テストセットと204の検査からなる外部テストセットの両方において、臨床的意義のある前立腺がんの検出における深層学習モデルの性能は、経験豊富な腹部専門放射線科医(abdominal radiologists)と変わらなかった。また、ディープラーニングモデルと放射線科医の所見の組み合わせは、内部テストセットと外部テストセットの両方において、放射線科医単独よりも優れた性能を示した。

著者らは「このモデルが読影医を補助し、偽陽性を低減したがん検出の向上を通じて、MRI診断能の改善につながる可能性」を指摘している。

参照論文:

Fully Automated Deep Learning Model to Detect Clinically Significant Prostate Cancer at MRI

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