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前立腺がん病理診断AIプロジェクトから提唱された「国際協力の必要性」

前立腺がんの早期発見にAI技術を役立たせる試みが続くが、採取される検体、画像のスキャン方法、そして患者集団には大きな差異があり、アルゴリズムをあらゆる状況に普遍的に適用することは容易ではない。よりパフォーマンスの高い堅牢なAIモデル構築を目指し、スウェーデンのカロリンスカ研究所を中心とした国際研究グループは、前立腺がんの病理診断を等級分けするAIシステム開発の国際コンペを主催してきた(過去記事参照)。

コンペの成果は欧州泌尿器科学会(EAU)2022年次総会で発表された。グループは「AIによって患者の健康を向上させるには、国際協力体制の構築が唯一の手段である」とした上で、責任あるアルゴリズムの臨床導入に必要となる4項目を明らかにした。1.スキャナーのキャリブレーション:どこでスキャンしても同じセットアップが出来ること。2.アルゴリズムの改善:先端のAI手法を活用し、堅牢で幅広い適用性を確保すること。3.データのアップスケール:モデルトレーニングのための大規模な国際的データセットを提供すること。4.形態学的不均一性のモデル化:同一疾患の中で異なるサブタイプを調べること。

カロリンスカ研究所のNita Mulliqi氏は「AIは大きな可能性を秘め、あらゆる患者に恩恵をもたらすが、その達成には技術的アプローチ、そしてばらつきのある患者データを収集する国際的な取り組みが必要だ。我々のプロジェクトは、臨床医と患者に大きな変革をもたらすために、どれだけの協力が必要となるかを示している」と語った。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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