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乳がん病理画像から「HER2発現の有無」を予測するAI

乳がん患者のH&E染色された組織病理画像から、HER2の発現(陰性、低発現、高発現)を予測する弱教師ありディープラーニングモデルが高い精度を示すことが明らかにされた。ブラジルの研究チームによる本成果は、8月19日からBreast Cancer Researchで公開されている。

HER2はがん細胞の増殖に関与するタンパク質だが、「HER2低発現」は最近注目されている乳がんのサブタイプであり、このタイプに対して新しい抗体薬物複合体による治療効果が示されている。従来のHER2評価には複数の免疫組織化学検査(IHC)と、場合によっては追加のin situ ハイブリダイゼーション検査(ISH)が必要だったが、本研究のAIはより迅速で費用対効果の高いHER2の評価方法となり得る。

本研究では、1,351人の乳がん患者から得られた1,437枚のH&E染色全スライド画像を使用し、6つの異なる深層学習モデルを構築して、HER2陰性、HER2低発現、HER2高発現の3クラスを区別する能力を検証した。モデルはアテンション機構ベースの弱教師あり学習法を用いてトレーニングされた。結果として、HER2陰性とHER2高発現を区別するモデルが最も高い性能を示した。一方で、HER2低発現の分類は比較的困難であることが明らかになっている。

研究者らは、この技術が臨床での意思決定を支援する可能性があると指摘する。例えば、IHC検査で2+と判定された「判定保留」の症例で、追加のISH検査が必要な場合、このディープラーニングモデルを用いてHER2低発現かHER2高発現かを判別することができる。また、IHC検査前のスクリーニングとしてHER2陰性とHER2高発現を区別するのにも有用となり得る。

著者らは、「将来的には、この技術が病理医のHER2評価を支援し、バイオマーカー評価の意思決定をサポートすることが期待される」と述べた。

参照論文:

Weakly-supervised deep learning models enable HER2-low prediction from H&E stained slides 

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