過去に行われたメタ分析によると、臨床現場では約20人に1人の患者が「予防可能なインシデント」に遭遇している。薬剤関連のエラーはこれらのインシデントの主な原因であり、最大12%で重篤な状態もしくは死亡につながるとされる。これらを防ぐため、米ワシントン大学の研究チームは「AI対応ウェアラブルカメラで投薬ミスを検出するAI」の評価を行い、その成果をNatureの専門紙であるnpj Digital Medicineに発表した。
研究チームは、13名の麻酔科医に頭部装着型のカメラをつけながら薬剤準備をしてもらい、55日間にわたって4K映像を収集し、独自の大規模ビデオデータセットを作成した。そこから深層学習アルゴリズムを使用して、実際の手術室で記録された薬剤準備において、注射器とバイアルの薬剤ラベルを検出・分類した。その結果、高精度に薬剤ラベルを検出・分類できることが明らかとなり、特にバイアル交換エラーの検出において99.6%の感度と98.8%の特異度を達成している。
著者らは「このシステムは臨床現場で自動化された薬剤チェック手段を提供する可能性があり、手術室外でも有益なツールとなり得る」と語っている。カメラ搭載のウェアラブルデバイスが進化・普及し始めている昨今の背景も含め、本研究は今後の各種ウェアラブルデバイス研究に大きな示唆を与えている。
参照論文:
Detecting clinical medication errors with AI enabled wearable cameras
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