急性腹症は、救急外来(Emergency Department: ED)受診の全体の5〜10%を占め、中でも急性虫垂炎は頻繁に遭遇する疾患の一つである。Alvaradoスコアをはじめとする、虫垂炎診断予測スコアが開発されているが、虫垂炎とその他の急性腹症との鑑別は依然として臨床的に重要な課題である。オランダの研究チームが、2024年12月23日、World Journal of Emergency Surgeryに、EDにおける急性腹症症例から虫垂炎を早期特定するための機械学習(ML)モデルに関する研究結果を公表した。
同研究では、EDを受診した350例の急性腹症症例から、病歴、バイタルサイン、身体所見、臨床検査結果のデータが抽出され、虫垂炎の早期診断を目的に2種類のMLモデルが構築された。1つは、病歴、バイタルサイン、身体所見を使用したモデル(HIVE)であり、もう1つは、これらに加え検査結果(血液・画像検査)を含めたモデル(HIVE-LAB)である。研究チームは、これら2つのMLモデルを、AUROCを最適化するよう訓練し、その結果をAlvaradoスコアと比較した。結果、虫垂炎とその他の急性腹症の鑑別において、HIVEは0.919、HIVE-LABは0.923のAUROCを達成し、両者に統計学的有意差は認めなかった。AlvaradoスコアのAUROCは、MLモデルと比較し有意に低かった(0.824)。
研究チームは、「HIVEモデルを導入することで、ED受診から早い段階で、臨床検査に依存することなく、虫垂炎の可能性の高い患者を特定できる」とコメントしている。また、プライマリーケア医のEDへの紹介精度を高められる可能性も指摘している。今後、臨床検査に頼らないHIVEモデルを、様々な集団や臨床現場において検証することで、本モデルがより一般化されることが期待される。
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