従来の画像を用いた末梢動脈疾患(PAD)診断は主に大血管の狭窄を評価するものであり、微小血管の血流障害を定量的に評価する方法は確立されていなかった。このほど、米ペンシルバニア州立大学やヒューストン・メソジスト病院、ベイラー医科大学などの合同研究チームは、造影磁気共鳴画像(CE-MRI)と機械学習を組み合わせたPADの新たな診断手法を発表した。本成果はNatureの関連誌であるScientific Reportsで公開されている。
同研究では、56名の参加者(PAD患者36名、対照群20名)の下腿筋のCE-MRIデータを分析し、PAD患者の微小血管障害を明確に可視化した。 造影剤を用いたMRI撮像後、時間経過による各筋群の信号強度変化を追跡し、各画素を過灌流、正常灌流、低灌流に分類した。このデータを基に機械学習の決定木分類器を訓練した結果、PAD患者と対照群を87.6%のF1スコアで識別できた。また、低灌流領域の割合を用いることで、運動能力が低いPAD患者や糖尿病を合併するPAD患者をそれぞれ67.6%、70.3%の精度で識別可能であった。
研究チームは「本手法は、非侵襲的に微小血管の灌流障害を評価できることが大きな利点だ。また、従来の診断法では把握しにくいPADの進行度や患者ごとのリスク評価に貢献できる可能性がある」と述べている。今後は、大規模データを用いたモデルの精度向上と、臨床応用に向けたシステム開発を進める予定だ。
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