CTから冠動脈の血流低下を予測するAI

冠動脈造影による狭窄評価の際、比較的軽度な狭窄、あるいは複数部位の狭窄においては、胸痛症状の原因となる責任部位を判断しにくいケースがある。実際の血流低下を知るには、ワイヤーセンサーを用いて狭窄部位の前後で血管内圧を侵襲的に測定し、「冠血流予備量比(FFR: fractional flow reserve)」というリスク指標を算出する必要がある。

米シダーズ・サイナイメディカルセンターの研究チームは「CTから冠動脈の血流低下を予測するAIツール」を開発し、非侵襲的な検査手法の確立を試みている。Circulation: Cardiovascular Imagingに掲載された同研究では、CT検査に機械学習手法を適用し、冠動脈内に蓄積した「プラーク」の定量的解析からFFRの低下を予測するAIツールを構築した。その結果、同ツールから算出されるスコアは、侵襲的なFFR測定と同等のリスク評価性能を示すことができたとする。

研究の責任者でシダーズ・サイナイのDamini Dey教授は「CTにおけるプラークと狭窄のデータをAIで統合することにより、高精度にFFRの低下を予測できれば、狭窄がもたらす機能的意義を認識した上で患者を正しくリスク層別化できるようになる」と語っている

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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