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心臓造影MRIから突然死のリスクと発生タイミングを予測するAI研究

不整脈による心臓突然死は、死因の20%にも上ると推定されるが、リスクのある特定の個人を見分けることは容易ではない。リスクの低さに見合わない「ペースメーカー埋め込み」が過剰に行われている現実がある一方、必要な治療を受けておらず、働き盛りの年齢に突然死してしまう高リスク患者もいる。米ジョンズホプキンズ大学のチームは、AIアプローチによって患者個々の心停止リスクと、それがいつ起きる可能性が高いのかを予測する研究を行っている。

ジョンズホプキンズ大学の発表によると、Nature Cardiovascular Research誌に掲載された同研究では、10年内に心臓突然死が起きる確率とその時期を、ディープラーニング技術によって高精度に予測しようとしている。同技術は「Survival Study of Cardiac Arrhythmia Risk(SSCAR)」と呼ばれ、虚血性心疾患患者の心臓造影MRIの画像データから、アルゴリズムのトレーニングを行った。従来の解析手法では「単純な心筋の瘢痕部位の特徴を抽出したとしても、そこに含まれる重要な情報を十分に活用できていなかった」とする。開発されたモデルの性能は、従来の標準的な生存予測モデルを十分に上回ることが示されており、臨床的意思決定のあり方を変える可能性があるとチームは期待する。

ジョンズホプキンズ大学のインタビューに対し、筆頭著者のDan Popescu氏は「検査画像には、医師がアクセスできなかった重要な情報が含まれている。心筋の瘢痕は様々な形で分布し、患者の生存可能性について何かを物語る。情報はそこに隠されている」と語っている。チームは他の心疾患を検出するアルゴリズム構築にも取り組み、ディープラーニング手法による本研究のコンセプトを、視覚的な診断に依存する他の医療分野へ発展させることを検討している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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