主要心血管イベントへのAIリスク予測

主要心血管イベント(MACE)は心血管系臨床試験で広く用いられている複合エンドポイントで、心血管死・非致死性心筋梗塞・脳卒中などが含まれる(編集部注:内包する疾患群についての詳細な定義が緩やかに異なることはMACEの問題点で、試験結果の比較可能性を低めている)。MACEリスクのある患者を早期に特定し、適切な介入による予防を目指すAI研究が、オーストリア・グラーツ医科大学などの研究チームによって進められている。

Studies in Health Technology and Informaticsから7日公開されたチームの研究論文によると、MACE患者29,262人を含む128,000人以上の電子カルテ記録から機械学習アルゴリズムを導いたという。フィルタ法および組み込み法による特徴量選択により、モデリングに用いる826の特徴量を得た上で、ある時点から5年間のMACE発生を予測する複数の機械学習モデルをトレーニングした。ランダムフォレストモデルはAUC 0.88で、最高のキャリブレーションと識別性能を達成した。

研究チームはテストデータでの優れたパフォーマンスを強調しながら、「真の臨床的有効性を決定するには前向き研究の実施が不可欠」として、研究継続の意向を明らかにしている。なお、本研究に類似する先行研究として、本年1月にThe Lancetから公開されたこちらの論文が非常に示唆的である。関心のある読者は参照のこと。

関連記事:

  1. PROFID – AIで心臓突然死リスクと植込み型除細動器の適応を検証
  2. メイヨークリニック – AIと患者データを結ぶ新規プラットフォームを発表
  3. 電子カルテとAI – 新型コロナウイルス感染後の死亡リスクを高める46の危険因子を特定
  4. NLPとAI – 患者フィードバック解析についてのシステマティックレビュー

前の記事全身麻酔の深度を予測するAI研究の発展
次の記事医療現場を邪魔しないロボット用AIナビゲーション
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。
The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。

1. M.Okamoto MD, MPH, MSc, PhD
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、SBI大学院大学客員准教授、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. T.Sugino MD
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。