医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例脳出血後の血腫拡大をAIで予測する試み

脳出血後の血腫拡大をAIで予測する試み

非外傷性脳出血(ICH)後に血腫拡大が見られる患者は、しばしば不良な経過を辿るため、予防的な治療介入が必要となる。一方、画像検査の視覚的特徴等を基に臨床医が血腫拡大を推測することは難しく、予測モデルの研究深化が望まれている。このたび米ニューヨーク大学の研究チームは、機械学習モデルが専門医の予測精度を上回ったとの研究成果Neurocritical Care誌に発表した。

同研究では、高血圧性急性脳出血の第2相試験(ATACH-2)に参加した900人のICH患者のデータを用いて、機械学習モデルの教師あり学習を行った。そして独立したテストコホート(n=279)で、血腫拡大(24時間以内の33%以上、または6mL以上の拡大と定義)の予測性能を評価し、また専門医による予測精度との比較を行った。モデルは、CT画像のみで学習を行ったトランスフォーマーモデル(DLモデル)と、CT画像と臨床データで学習したランダムフォレストモデル(RFモデル)の2種類を用いた。その結果、専門医による血腫拡大予測のAUCが0.591なのに対し、DLモデルのAUCは0.680、RFモデルのAUCは0.677と、臨床医を上回る予測精度が得られた。

著者らは「本モデルのAUCは必ずしも高いとは言えないが、専門医による予測がそれ以上に困難であることを踏まえると、補助的に活用できる余地はあるだろう」と述べている。今後は、多様な出血性素因を持つ大規模な集団における厳密な検証が望まれている。

参照論文:

Predicting hematoma expansion after intracerebral hemorrhage: a comparison of clinician prediction with deep learning radiomics models

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Shun Katayose
Shun Katayose
1.片寄駿 旭川医科大学医学部卒(MD)、Columbia University研究員、Accenture, LPIXELにて機械学習エンジニア、医療AIスタートアップのCEOなど。
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