医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例AIによる心臓弁膜症・逆流症の評価とリスク層別化:DELINEATE-Regurgitation研究

AIによる心臓弁膜症・逆流症の評価とリスク層別化:DELINEATE-Regurgitation研究

弁膜症の一つである閉鎖不全症/逆流症は、診断の複雑さと患者の転帰への影響から、正確な診断および重症度判定が必要とされるが、その精度には現状ばらつきがある。この課題に対し、米コロンビア大学アービング医療センターらの研究チームは、経胸壁心エコー(TTE)画像を用いた深層学習システムで、逆流症の分類および僧帽弁逆流症(MR)の進行リスクの層別化が良好に行えるとの研究成果を発表した。本研究European Heart Journalに掲載されている。

本研究では、71,660件のTTE検査から得た1,203,980件のカラードプラ動画を用いて、時空間畳み込みニューラルネットワーク(Spatiotemporal Convolutional Neural Networks)の学習を行った。まず逆流症の分類予測において最適な動画抽出法を検討した結果、「単一ビューよりも複数ビュー」を用いて、「重度の逆流を示唆する上位3動画より、全動画について各々行った予測に動的な重み付けをして統合する」方が、総じて精度が高いことが明らかとなった。特に三尖弁逆流症においては、複数ビューによる精度向上が顕著であった。また、別のタスクとして、僧帽弁逆流症患者における2年以内の疾患進行リスク予測を行ったところ、正確なリスク層別化が可能であることが示された。本研究で作成したDELINEATE-MR-Progressionモデルによるリスクスコアに関して、内部テストセットのハザード比は4.1、外部テストセットでは2.1となった。

研究チームは「本モデルで各患者の進行リスクを予測することで、心エコー検査の間隔に関する臨床意思決定支援に役立てることが出来る。例えば、フォローアップの頻度を個別化することが可能となるだろう。また、近年研究が進むAIエコーと組み合わせることで、一貫した検査を実現したい」と述べている。

参照論文:
Deep learning for echocardiographic assessment and risk stratification of aortic, mitral, and tricuspid regurgitation: the DELINEATE-Regurgitation study

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R.A.
R.A.
東京大学医学部医学科。医学を学ぶ傍ら、機械学習や深層学習に関心を持ち、シンクタンク・AI企業でのインターンにて、データ分析や社会実装の現場を経験。テクノロジーを活かした知の発掘,医療の質向上の実現を目指している。
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