術後急性腎障害を予測するAI

術後の急性腎障害(AKI)は、入院中の死亡率を約3倍から9倍に高める重大な合併症であり、AKIの予測と予防的介入が重要である。いくつかの術後AKIのリスク評価ツールが発表されているが、少数の施設での研究に基づくため、精度には限界がある。こうした課題を受けて、韓国の研究チームは多施設コホート研究により機械学習を用いた術後AKIのリスク予測モデルを構築し、その成果をJournal of Medical Internet Research発表した。

研究チームは、2009〜2019年までに韓国カトリック大学関連の7つの大学病院にて全身麻酔下に行われた手術239,267件(術後AKI症例は7,935件)を対象に、ディープニューラルネットワーク(DNN)、ロジスティック回帰、決定木、ランダムフォレスト、LightGBM、ナイーブベイズの6つの機械学習モデルにおいて学習を行い、術後AKIの予測能力を検証した。モデルの学習に使用された変数は最大38個で、患者属性や手術情報、血液検査の結果がなど含まれていた。その結果、LightGBM(AUC=0.836)、DNN(AUC=0.832)、ロジスティック回帰(AUC=0.825)が優れたパフォーマンスを示し、38個の変数すべてを組み込んだ場合に最も高い性能を発揮した。

術後AKIのリスクを予測する本モデルは、これまでの研究と比較して大規模多施設のデータセットを用いて多数の機械学習手法を比較した点に強みがある。研究者たちは、「本モデルの一般化性能を検証するためには、外部検証を行う必要がある」と述べている。

参照論文:
A Risk Prediction Model (CMC-AKIX) for Postoperative Acute Kidney Injury Using Machine Learning: Algorithm Development and Validation

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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