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整形外科手術後の急性腎不全を予測するAI研究

急性腎不全(AKI: acute kidney injury)は、腎血流の減少や代謝物の蓄積といった、体内環境の大きな変化によって発生する。AKIは手術後の合併症としても良く知られ、予備能力の低下した高齢者に起きやすく、世界的な高齢化を背景としてAKIは増加傾向にある。中国・徐州医科大学附属医院麻酔科の研究チームは、整形外科術後の高齢者におけるAKIリスクを予測するAIモデル研究の成果を発表している。

Clinical Interventions in Agingからこのほど公開された同研究論文によると、2016〜2021年までに徐州医科大学附属医院で整形外科手術を受けた平均年齢71歳の高齢者1,000名を対象として、9種類のアルゴリズムを用い、AKIの予測能力を検証している。その結果、トレーニングデータセットにおいてはランダムフォレストモデルが優れていた一方、検証データセットにおいてはロジスティック回帰モデルが優れた予測力を示していた。これを受け、研究チームはロジスティック回帰モデルを基にしたノモグラムを作成し、臨床現場において利用可能な意思決定支援ツールとしてまとめている。また、本研究から導かれた「高い予測力を持つ術前リスク因子」は、年齢・BMI・ASA分類・低蛋白血症・高血圧・糖尿病・貧血などであった。

術後AKIを予測するAIモデル研究は、心臓など胸部手術を中心に開発が進んでおり、整形外科に適用した先行例は未だ少ない。適用領域の裾野が広がり、従来の画一的な治療ガイドラインを上回る、個別の予測能力に優れたAI/機械学習ツールが今後も続々と登場していくだろう。

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The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。

1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員准教授など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. 杉野 智啓
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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