乳がん検出AI「Transpara」- 過去最大規模の検証研究

乳がん検出のためマンモグラフィ検査用AIが有望視されているが、有益なエビデンスは積み重ねの途上でもある。国際的に信頼性の高いノルウェーのがん登録データに基づき、ScreenPoint Medical社の画像診断AI「Transpara」の乳がん検出能力を検証した研究成果がRadiology誌に発表されている。

本研究は、ノルウェーの公的乳がん検診プログラム「BreastScreen Norway」によって、国内4施設で行われた女性47,877名・122,969件の乳がんスクリーニング検査を解析している。AIシステム「Transpara」の性能を検証するため、医師による通常の2回読影と比較するとともに、Transparaの独自リスク評価スコアと病理学的特徴の関連を評価した。その結果、Transparaはスクリーニングで検出された752例のうち653例(86.8%)の検出に成功した。またスクリーニング後のフォローアップ期間で検出されるがん、いわゆる「インターバルキャンサー(interval cancers)」の44.9%が、Transparaスコアの最高値10を記録していた。

ScreenPoint Medical社の発表内で、Breast Screen Norwayの代表で本研究の主著者であるSolveig Hofvind教授は「インターバルキャンサーに対するTransparaの優れた検出能力は驚くべきもので、今後のスクリーニングでAIシステムをテストしていくことが楽しみだ」とコメントしている。これまでで最大規模の検証を経て、乳がん検出AIの臨床実装がまた一歩現実に近づいたことを感じさせる。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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